スペインでもっとも定評のある

薬物依存の予防・リハビリプログラム


 

●設立は1984年。ヘロインの使用により街角で亡くなっていく若者たちを前に、有志たちが、イタリアで効果をあげていた『Progetto Uomo』というプログラムをスペインに導入したのが始まりです。瞬く間に全国に広がり、現在では27支部が展開。2014年は1万6600人以上の薬物使用者とその家族に対応しました。

 

●各支部は、それぞれ自立運営しながら方法論と理念を共有。その連合体として首都マドリードに『プロジェクト・オンブレ協会』があり、セラピスト研修、プログラム開発、研究などを手がけています。世界治療共同体連盟の主要メンバーであり、ヨーロッパ、南米の治療共同体とも積極的に経験の交流をしています。

 

●スペインの薬物使用の状況は、プロジェクト・オンブレが設立された当初から変わり続けています。特に1990年代以降はヘロインの使用が減り、現在ではコカインとアルコールがメインの薬物となっています。プロジェクト・オンブレでは、こうした変遷や利用者のニーズに合わせ、治療共同体プロセスを含むベーシックプログラムのほか、通所プログラム(主に夜間)、思春期プログラム、家族プログラム、刑務所内治療共同体、予防、企業予防、ハームリダクションなど、幅広い包括的なプログラムを展開しているのが特徴です。

 

●専門家と回復者(リハビリ経験者)が協働することは、設立当初からの理念でもあります。同時にボランティアも欠かせない存在で、年間2000人以上がさまざまな分野で協力しています。*プログラムの質を保つため、認定セラピストになるためにはプロジェクト・オンブレ協会研修センターでの240時間の研修と、960時間の実地研修、試験が必要です。すべてのボランティアもボランティア研修を受けています。

 

*本部機能を持ちセラピスト研修や研究を行なうプロジェクト・オンブレ協会は、2014年で25周年を迎えました。その間、全国のプロジェクト・オンブレでは33万4000人以上の依存者とその家族に対応。マドリードで行なわれた25周年記念式典にはスペインのソフィア王妃も参加し、プロジェクト・オンブレ協会25年間の取り組みを称え、継続的な支援を表明しました。 

 

 


大切なのは「人」 


 

●「人」に焦点を当てるプロジェクト・オンブレでは、アルコール薬物の使用は表に現われた「症状・兆候」の一つと考えます。本当の問題は、その人の内側や生活(人間関係・社会生活)の中で起きている――。つまり薬物の使用はその人の中で何かがうまくいっていないことを示すサインであり、「痛み」からの回避なのです。

 

●アルコール薬物使用者は、その行動だけを見ると、わがままで嘘つきで自己中心的に見えます。家庭を省みず、人や自分を傷つけ、破滅的な人生を歩んでいるかに見えます。けれどもその内面には、薬物に隠されてしまって見えない「生きる力」が潜んでいます。一人一人が「人」としての尊厳を取り戻し、責任ある社会の一員となることを目指していくのが「プロジェクト・オンブレ」の真髄でもあります。

 

●プロジェクト・オンブレでは、「人は変わることができる」と信じています。プログラムに人を合わせようとするのではなく、人にプログラムを合わせていきます。たとえばスペインは、地方により文化も言語も気候も生活スタイルも違います。そうした多様性と時代のニーズに合わせプログラムを変化させつつも、「人を大切にする」という視点が揺らぐことはありません。

 

●プロジェクト・オンブレでは、「家族」もプログラムの大切な柱の一つです。そのため各プログラムには、家族やパートナーとのプログラムが綿密に組み込まれており、家族も本人とのコミュニケーションを学んでいきます。年間8万人に行なっている予防教育も、子どもたちだけでなく家族も対象にしています。

Asociación Proyecto Hombre(スペイン語)