★DARS in 大阪で発表してきました!

DARS(Drug Addicts Rehabilitation Supports)の薬物依存者回復支援セミナー『アディクション・トランス・アドボカシー/多様な嗜癖・嗜虐行為からの回復支援の未来予想図 〜オランダ・スペイン・ポルトガル〜』で発表してきました。

 

ここ数年、日本では「ハームリダクション」という言葉が聞かれるようになりました。ポルトガルが2001年に違法薬物の個人使用・単純所持を非犯罪化し社会復帰とセットにしたハームリダクション対策で効果をあげたことが注目されていますが、お隣のスペインはどうなのか?

 

実はスペインでは、70年代に最高裁で「個人使用は犯罪ではない」という判例が出て以来、個人使用と単純所持は非犯罪化する流れができました。その後、公共の場での薬物使用、所持などは市民安全保護法の「違反」に位置づけられ、公衆衛生の問題として扱われています。プロジェクト・オンブレでも、罰金を治療に代替することを選んだ人たちがプログラムを受けに来ていました。残念なことに、2015年の法改正で罰金を治療に代替する仕組みが未成年だけに限られるようになり、スペインの薬物対策は一歩後退してしまいました。

 

窃盗や密売など、薬物にからむ犯罪に関しては、刑法の中に治療に代替する執行猶予の制度や、受刑期間を外部のリハビリ施設で満了するシステムなどがあります。プロジェクト・オンブレは、こうした制度の受け皿となる民間機関の一つになっています。

 

スペインではヘロインの使用が大きな問題になった80年代に、国が薬物対策を立てる前に民間の機関が次々と誕生。90年代以降、公的機関でもさまざまなサービスが受けられるようになりましたが、今でも民間機関が多くの役割を担っています。中でも大きなものが全国に支部を展開する非営利組織プロジェクト・オンブレで、予防から刑務所内治療共同体、ハームリダクションまで、年間のべ1万7000人以上(予防は除く)の薬物・アルコールを始めとするアディクション問題を持つ人とその家族に対応しています。

 

日本では予防一つとっても『ダメ・ゼッタイ』で、使用をした人に対しては、重度の依存になるまで介入するシステムがありません。プロジェクト・オンブレのように、その人の段階や状況に合わせたプログラムを展開できるような仕組みができていってほしい、そんな思いで発表をしてきました。